地球温暖化が原因で
「北極の氷が溶けている…」
「界面が上昇して南の島が沈む…」
などということを、よく耳にしますが、「世界中の氷河がとけていて、アジアだけで20億人が水不足になる」ということもご存知ですか?
100年で99%の氷河が消えた地域もあるのです。
干ばつや水不足に悩まされるアフリカのキリマンジェロは3年後の2022年に全ての氷山がなくなり、深刻な水不足、食糧不足に陥るという調査報告もでています。
今回は、あまり注目されていない世界各地の「氷河」が溶けてしまうと、どのような影響を、「わたしたち人間や、その他の動物、植物に与えるのか?」一緒にみていきましょう。
とても残念ですが、「氷河の融解を止めることは不可能」とまで言われているほど状況は深刻です。
意外と知らない「氷山」と「氷河」の違いとは?
そもそも「氷山」と「氷河」の違いは何でしょうか?
氷河とは…
地球上の寒い地域では、降り積もった雪が厳しい寒さのためすぐに解けず一年中残ります。
これを「万年雪」といいます。
そして、毎年新たに積もる雪の重さによって万年雪は固められ、少しずつ低い方向へ移動していきます。これが「氷河」です。
氷山とは…
氷河は数千年をかけて移動し海に至ります。こうして海に押し出された部分は氷河から分離します。これが「氷山」です。
氷山だけじゃない!氷河も解けてきている!
「北極の氷が溶けて、ホッキョクグマが餓死している」
「南極の氷がとけている…」
という話を聞くように氷山が溶けていることは有名ですが、これから紹介する氷河の溶けぐあいは、もっと深刻な状況です。
ヒマラヤ山脈:1/3の氷河が消える…
↑2018年3月5日に撮影されたヒマラヤ山脈と氷河
一つ目の例として挙げるのは、世界最高峰のヒマラヤ山脈です。
ヒマラヤ山脈と言えばあたり一面雪に覆われたエベレストを連想する人も多いのではないでしょうか?
しかし、ちょうどエベレストがあるヒンドゥークシュ地方の氷河は、21世紀末までに恐らく3分の1以上が解けてしまうと予測する報告書が発表されました。
また、これまでの調査によると、この地域の氷河の体積は21世紀の間に45%~90%縮小する可能性があります。
キリマンジャロ:2022年に氷河が全滅…
アフリカ最高峰の山キリマンジャロの語源は「白く輝く山」です。しかし、そのキリマンジャロの氷河も地球温暖化の影響により急激に縮小しています。
米国オハイオ大学などの研究によると、キリマンジャロの氷河は1912~2007年までの95年間で85%も減少し、早ければ2022年、遅くとも2033年には消滅すると予測されています。
フンボルト氷河:残された1%の氷河が毎年半減…
↑1950年に撮影されたフンボルト山(右)と2011年撮影の比較写真。氷河が豊富に残っていた様子が確認できます。
フンボルト氷河は、南アメリカ大陸を縦断するアンデス山脈の最高峰にある氷河です。なんとその標高は5000mを越えます。
しかし、ある研究によると、1910年には10㎢もあった氷河が、現在では当時の1%にも満たないほど縮小しています。
また、1970年代以降、標高5400m以下にある氷河は毎年平均で1.35mずつ薄くなっており、30~50%縮小しています。
毎年半分もなくなっていると考えると、すごいスピードで縮小していることが分かりますね……。
高山の氷河が溶けている原因は「気温の上昇」
情報元:気象庁
気象庁のデータによると地球の年平均気温は、長期的にはこ100年単位で0.72℃の割合で上昇してます。
一般に氷河の研究者の間では、「この気温上昇が氷河縮小の原因である」ということが定説となっています。
もちろん、自然のしくみの一環で氷河が解けている、ということも考えられますが、解けるスピードが速くなったのは地球温暖化の影響とされています。
高山の氷河が溶けて生態系に与えるダメージがスゴイ…
人間:20億人が水不足に…
国際総合山岳開発センター(ICIMOD)の報告書では、ヒマラヤ山脈があるインドのヒンドゥークシュ地方地方では、氷河の縮小ペースが加速したために、洪水や地滑り、感染症などの問題が引き起こされた、と述べられています。
高山の氷河の恩恵を受けている地域住民は、洪水が起きたり、氷河が消滅して水を得ることができなくなれば、作物を育てることができなくなり食糧不足に陥ります。
そして、状況がさらに深刻化すれば、最終的には、その地域では生活で暮らすことができなくなります。
特に、氷河が存在するような高山の多くは標高も高く広大な地域にまたがって存在しています。
例えば、ヒマラヤ山脈が位置するチベット高原は、総面積250万㎢(←なんと日本の6倍!!)にも及び、世界の氷河の内14.5%を保有し、アジア20億人以上に淡水を供給しています。
現時点でも、すでに氷河縮小の影響で、草原面積の縮小や河川水位の低下が記録されています。
また、ヒマラヤ山脈の氷河がすべて解けるだけでも、海水面が1.5mも上昇すると言われています。
もし、この地域一帯の氷河が消滅すれば、アジアのたくさんの人々の暮らしが脅かされるだけでなく、水没の危機に瀕している島の人々も生きていけなくなってしまいます。
動物:川が干上がり生息地を無くす…
氷河の縮小で影響を受けるのは人間だけではありません。
キリマンジャロの雪解け水の恩恵を受けているアンボセリ国立公園はその豊かな水によって湿地を形成しています。
そして、その湿地には、ゾウやキリン、カバなどをはじめとする多様な動物が生息しています。
しかし、この先キリマンジャロの氷河が消滅して、その水資源を得ることができなくなれば、湿地も消滅し、そこに生息していた動物たちは生きていけなくなってしまいます。
これは、この地域に限ったことではなく、氷河の恩恵を受けている地域に生息している動物はみな同じ危機に直面しているのです。
植物・微生物:分布地を移動して平野は砂漠化?
人や動物が影響を受けるならば、もちろん植物も影響を受けます。
例えば、ある研究によると、アフリカにあるケニア山では、氷河が衰退したことにより、植物の垂直分布が上に移動しています。
簡単に言うと、ある植物が、より高いところでも生息できるようになったということです。
また、氷河には積雪により新しく形成される部分と重さによって移動していく部分の2つがあります。
そして、その2つの部分は環境が全く違うため、生息する微生物や藻類が異なり、一つの氷河の中で多種多様な生態系を形成しています。
しかし、氷河が縮小すれば、そこで生息していた生物の活動領域も狭まったり、あるいは生息できなくなります。
このように、氷河の縮小や急速な融解によって植物や微生物の生態系も変化してしまうのです。
今、私達に今できることってあるの?
1.地球温暖化のことを理解する
何よりも大切なのは、まずは「知る」ことです。
地球温暖化によって世界中のいたるところで問題が引き起こされています。しかし、幸いなことに日本は気候条件や水に恵まれており、中々その実態を生活の中で把握することは簡単ではありません。
最近は、環境問題を扱ったTV番組やWebメディアなどがたくさんあります。是非それらを積極的に使って、地球温暖化がひきおこされる原因、実際の問題現場の状況を知ってみてください。
2.周囲に発信する
次に、自分が得た知識や情報を周囲の人に「発信」します。
一人の取り組みでは、地球温暖化の解決に向かうことはできません。しかし、より多くの人に知ってもらい、取り組む人が一人でも増えれば、成果も大きくなります。
どんどん家族や友達に伝えていきましょう!
例えば以下のチェック項目を周知してみませんか?
3Rは時代遅れ、令和時代は18Rに。あなたはいくつ達成クリアしてる? >
3.行動する
そして、さいごに大切なのは、実際に「行動する」ことです。行動しなければ現状を変えることはできません。
私たちが生活の中で実行できる取り組みはたくさんあります。
節電はやっぱり大事
節電をこころがけるだけでも温室効果ガスの排出量を抑えることができます。
例えば、出かけるときに冷蔵庫など必要なもの以外のコンセントを抜いたり、トイレの便座の電源をオフにしたり、なるべく冷暖房を使わないようにしたり……、考えたらたくさん出てきますね。
化石燃料の消費を減らす
化石燃料を燃やす際には大量の温室効果ガスが排出されます。従って、化石燃料の消費を減らすことは、地球温暖化の防止にとても大きな意味をもちます。
少し面倒に感じる人もいるかもしれませんが、交通手段として車ではなく電車や自転車を積極的に使うようにしましょう。
プラスチックの消費を減らす
プラスチックは作られるときに化石燃料を使うため、これも二酸化炭素を排出を促しています。
例えば、水筒やお弁当を持参する、買い物をするときはエコバックを使う、などが挙げられます。
大量消費社会の中で、プラスチックの使用量を減らすことは簡単ではありませんが、一人一人が毎日意識するだけで、少しずつ抑えることができます。
ここで紹介した以外にも、私たちが簡単にすぐに始められることはたくさんあります。
自分には何ができるか、どんどん考えて実行してみましょう!
まとめ:日本でサクラが見られなくなる前に…
ここでは、地球温暖化が氷河に与える影響や、それによって引き起こされる生態系の変化などを説明しました。
しかし、氷河の縮小が与える影響は科学的な側面だけにとどまりません。
もし、気候条件が変わって日本で桜が咲くことができなくなったとしたら、皆さんはどう思いますか?
きっと多くの日本人が悲しむのではないでしょうか?
キリマンジャロの氷河やフンボルト氷河は、日本人にとっての桜のように、その地域に暮らす人々にとってのアイデンティティでもあります。
遠いところで生きている人々に心を寄せることは簡単ではありません。でも、どうか他人事だとは思わずに、世界の変化に目を向けてみてください。
一人一人の小さな一歩が、地球全体の大きな取り組みへと繋がるのです。
コメント・シェアをして頂けると、この現状をより多くの人に知って頂けます。
「キリマンジャロの氷河の縮小」水野一晴, 地学雑誌 Journal of Geography 112(4) , 620-622, 2003
「地球温暖化に伴う氷河の変化」内藤望, 2011
「赤道高山の縮小する氷河」岩田修二, 立命館大学観光学部紀要 第12号, 73-92, 2010/03
「地球温暖化をめぐる『ヒマラヤの図式』」朝日克彦, 日本地理学会発表要旨集 2013s(0), 61, 2013
「ヒマラヤにおける氷河縮小の実態を探る」藤田耕史, 生物の化学 遺伝 2010年9月号, 68-74, 2010
「ヒマラヤ山脈、温暖化で広大な氷河が解ける恐れ 壊滅的影響も」CNN, 2019/02
https://www.cnn.co.jp/fringe/35132300.html
「アンデスの氷河、30年で半減 地球温暖化の影響で消滅の恐れも」日本経済新聞, 2013/01
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG25025_Y3A120C1000000/
「キリマンジャロの山頂の氷河、消滅寸前に」日本経済新聞, 2017/03
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO13923150Q7A310C1MY1000/
「見えてきた温暖化の影響」国立環境研究法人 国立環境研究所, 2009/04
www.nies.go.jp/escience/index.html
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