日本政府の発表では、日本のリサイクル率は84.8%と世界TOPクラスです。
しかし、世界基準に照らし合わせてみると、たった23%しかない事実もご存知ですか?
もし、現状のように低いリサイクル率を維持すれば、2070年には石油が枯渇すると予測されているので、便利なビニール袋や肉や魚が入っているトレーなどを使うことはできなくなります。
↑想像してみて下さい、石油製品(プラスチック製品)がなくなった世界を。
あなたが普段使っているエアコン、扇風機、冷蔵庫、洗濯機は、プラスチック素材が使われているので、石油が枯渇すれば
ナイロンやポリエステでできている、あなたの下着や洋服も製造できません。。。
↑大げさですが、50年後こんな生活を強制させられるとしたら、どう思いますか?
しかし、そんな絶望的な未来に立ち向かう世界的な飲料メーカーがあります。
これから紹介する企業は、なんとリサイクル率100%を宣言しているという徹底ぶりです。
どの企業がどんな方法でリサイクル率100%を目指すのか?最新技術と一緒に紹介します。
日本のペットボトルのリサイクル率は本当にスゴイ?海外と比較
PETボトルリサイクル推進協議会によると、2017年度の日本のペットボトルリサイクル率は84.8%だったそうです。
海外のリサイクル率はというと
- ヨーロッパは41.8%
- アメリカは20.9%
日本のペットボトルリサイクル率はとても高く世界最高水準だというのが分かります。
しかし、2018年1月に中国が廃プラスチックの輸入を禁止され、ペットボトルのリサイクル率が世界最高水準だなんて言ってられない状況になっています。
そもそも日本国内で回収されたペットボトルのうち、大部分が海外に輸出されていました。
PETボトルリサイクル推進協議会によると、2016年度の日本国内でのペットボトルの販売量は約60万トン。そのうち50万トンがリサイクルされていると発表。
リサイクル量50万トンのうち、約28万トンは日本国内でリサイクルされていますが、残り22万トンは海外に「輸出」されてリサイクルされています。
出典:クローズアップ現代
割合にすると44%に当たるので相当な量ですよね。
中国が輸入禁止をした現在は・・・
中国で輸入禁止されてから、日本ではペットボトルなどを含む廃プラスチック、約130万トンが行き場を失いました。
行き場を失った廃プラスチックごみは、廃棄物処理業者へ押し寄せていました。
ある廃棄物業者では、
行き場を失った汚れたままの200トンほどのプラスチック。
洗浄する設備を自社で整えることは資金の面で難しく、この会社に残されたリサイクルの選択肢はほとんどありません。
まず始めたのが、袋や包装フィルムなど軽くて燃えやすいプラスチックだけを選び、セメント工場などで燃料として使うリサイクルです。
出典:NHKニュース
しかし、この方法で処理できたのは200トンのうちたったの5%でした。それは、持ち込める工場が少ないためです。
残りの95%はリサイクルを諦めて、焼却施設に持ち込まれたそうです。
廃プラスチックのリサイクル割合
日本の焼却による「リサイクル」というのは、ごみを焼却したときにでる熱エネルギーを回収・利用するという方法(サーマルリサイクル)です。
これは日本独自のリサイクル方法であって、ヨーロッパで“サーマルリカバリー”と呼びリサイクルとされていない場合があります。
燃やしてしまうと、ペットボトルを製品の原料として再利用するマテリアルリサイクルはできていませんよね。
さらに、焼却施設の許容量もはるかに超えてきているため、引き受けてもらえなければ最終処分場に埋立てる方法しかないとも言われています。
いかがでしょうか?
世界最高水準のペットボトルリサイクル率を誇ると言いますが、日本のペットボトルのリサイクル事情の危うさが伺えませんか?
ペットボトルが呼び起こしている問題3つ
世界で、ペットボトルが呼び起こしている環境問題もあります。
マイクロプラスチックの問題
出典:Youtube
近年、世界中で海洋汚染、海洋生物へ被害を与えているマイクロプラスチック問題。
世界中でプラスチック製のストローやビニール袋の規制の動きが強まっています。
このマイクロプラスチック問題の原因には、ペットボトルも含まれているのです。
販売されたPETボトル約60万トンのうち回収されたのは約90%ですが、そのペットボトルの回収率が高いことは単純に喜べません。
販売されるペットボトルの数が非常に多いため、たった1割の未回収でも年間で26億本という数になります。
この26億本の未回収のペットボトルの行方は?
一部は燃やすゴミ、不燃ごみとして捨てられてしまったり、その他の多くは、ポイ捨てや雨風で飛ばされてしまった可能性もあります。
こういったペットボトルは、やがて海に流れこみ、海底にたくさん沈んでいる状態です。
世界中でプラスチックごみが年間800万トンも海に流出しており、イギリスのシンクタンクの調査によるとそのうち33%が飲料系のゴミと推定されています。
飲料用ペットボトルの回収率を100%にするだけで、海に流れ出るマイクロプラスチック問題を改善することができると考えられるのです。
資源の枯渇
ペットボトルは、石油を原料に高温・高真空で化学反応をさせて作る樹脂からできています。
原料である石油やガスなどの天然資源は100年後に枯渇すると言われています。
100年も先のこと・・・と思うかもしれませんが、中でも石油は2070年に枯渇すると言われているのです。
あと50年後には、ペットボトルだけでなく、プラスチック製品を便利に使う快適さが失われ資源の枯渇問題に直面します。
石油を原料とするペットボトルの製造を減らし、ペットボトルの100%リサイクルを目指すことが大切になります。
ゴミの埋立問題
冒頭でも触れたように、中国政府は、2018年1月に世界中から受け入れていた資源ごみ、プラスチックごみの輸入を禁止しました。
これまで、日本は国内で処理しきれないペットボトルごみの7割以上を中国に送っていたのです。
ほとんど中国頼り!!
しかし、現在は中国への輸出は禁止され、行き場を失ったペットボトルが私たちの目には触れないものの、溢れかえってきているのが現実です。
焼却もできなければ、最後は埋め立て処分場に持ち込むしかありません。
しかしゴミとして埋め立てれば環境汚染の懸念が残るため、できれば避けたいと廃棄物処理会社の社長は考えています。
出典:NHKニュース
行き場を失ったペットボトルのごみは、焼却もできなくなれば最後は埋立処分するしかないとも言われています。
そんな最終処分場の埋立地も残り20.4年で限界をむかえます。
リサイクルもされない、行き場のないペットボトルが最終処分場でこのまま埋立てられてしまうようになったら、20年という年月ももっと短くなってしまうかもしれません。
ペットボトルのリサイクル率100%を目標にする企業
一般社団法人全国清涼飲料連合会(東京都千代田区、会長:堀口英樹、以下:全清飲)はPET ボトルなどの容器包装を使用している事業者団体として、プラスチック資源循環や海洋プラスチック対策について「清涼飲料業界のプラスチック資源循環宣言」を発表します。清涼飲料業界が一丸となり、お客様、政府、自治体、関連団体等と連携しながら、2030年度までにPETボトルの100%有効利用を目指すことを宣言いたします。
日本の清涼飲料業界が2030年までにペットボトルを100%有効利用することを目指しています。
ペットボトルのリサイクル率100%を目標にしている企業が、どのようなアプローチをしていくのか見てみましょう。
エビアン
エビアンは2018年1月に『2025年までに100%リサイクルされた再生プラスチックでペットボトルを作る』という発表をしています。
プラスチックのリサイクルを増やし、廃棄による環境汚染を減らす目的。
2025年にはエビアンのペットボトルはすべてボトルから作られたボトルになるようです。
コカコーラ
コカコーラでは、廃棄物ゼロ社会を目指すグローバルプランを発表しています。
その内容は、2030年までに製品に使用するすべてのボトルと缶の回収・リサイクルを推進するというものです。
2030年に向けて、
- PETボトルの原材料として可能な限り石油由来の原材料を使用しない
- 国内PETボトル、缶の回収とリサイクル率の向上を目指す
- 清掃活動を通じ地域の美化に取り組む
廃棄物ゼロ社会を目指すために、回収率、リサイクル率、海洋ごみに関する啓発活動にも積極的に参加していくとのこと。
キリンホールディングス
キリンホールディングスは、「キリングループ プラスチックポリシー」で2027年までに日本国内におけるペット樹脂使用量の50%をリサイクル樹脂にすると発表。
さらに、
- 使い捨てプラスチックの削減
- 他の素材への代替
- ペットボトルの軽量化
これらの項目も推進しながら、2030年までにPETボトルの100%有効利用の実現に向けて取り組んでいくとのこと。
サントリー
2025年までに国内清涼飲料事業におけるサントリー社の全ペットボトル重量の半数以上に再生ペット素材を使用することを目指しています。
さらに植物由来原料100%使用ペットボトルの開発にも取り組んでいます。
アサヒ飲料
アサヒ飲料では、自動販売機に併設する回収ボックスで清涼飲料水の容器の回収率向上を目指しています。
さらに商品にロールラベルをつけないラベルレス商品によって樹脂使用量を約90%削減し、消費者のリサイクルへの手間を省くことで、資源循環に貢献する取り組みを始めた。
プラスチックの使用量を抑えるほか、2030年までにペットボトル商品の重量全体の6割に植物由来の素材やリサイクル素材を使用する目標も掲げています。
米ペプシコ
飲料世界大手のアメリカ・ペプシコが2025年までの目標として掲げているのは3つ。
- プラスチック容器を100%リサイクル
- 堆肥化または生分解可能な素材にして二酸化炭素排出量削減、再生素材割合の増加
- 2020年に再生ペットボトルの導入
2018年には、100%再生プラスチックでペットボトル製造をする企業のLoop Industriesと契約し、2020年に再生ペットボトルの導入を目指しています。
100%リサイクル!植物由来!最新のペットボトル技術2つ
各企業でペットボトルの100%リサイクルを目指す目標が掲げられていますが、100%リサイクルを大幅に進めてくれる最新ペットボトル技術も生まれています。
VolCat
米国IBMの研究チームが開発した「VolCat」は、ペットボトルやプラスチックを熱と圧力で科学的にリサイクルする技術で、リサイクルには必要不可欠だった洗浄や分別不要!
そして従来品より高品質のポリエチレンテレフタレート(PET)の再生産を可能にしています。
熱と少量の圧力だけで高品質PETの再生を実現できる最新ペットボトル技術です。
今後5年間で「VolCat」のような技術を世界規模で目指しているそうです。
オールバイオペットボトル
出典:アサヒ飲料
オールバイオペットボトルとは、植物由来原料でできたペットボトル。
「オールバイオペットボトルはボトルとキャップがサトウキビ由来、ラベルがトウモロコシ由来の植物由来原料をそれぞれ使用している。28年の取り組みでのバイオマス度はボトルとキャップが30%、ラベルが20%。しかし、翌29年にはラベルの材質などを見直し、ラベルのバイオマス度を75%に引き上げることに成功した」
出典:産経ニュース
植物由来の場合、石油由来のペットボトルに比べてCO2排出量は約25%少なく、29年度には年間約10トンのCO2削減効果があったそうです。
ただ、コストが高いのでなかなか採用されにくく、炭酸飲料ブランド「三ツ矢サイダー」の1.5リットルボトルのみにしか採用されていません。
普及のためにコストダウンや強度や使い勝手などの改良が必要な段階ですが、これから期待できる最新のペットボトル技術です。
【まとめ】リサイクル100%にしない限り資源は枯渇する
ペットボトルのリサイクル率を高めることで、環境問題の改善を進めることができます。
企業も最新のペットボトル技術の開発、2030年を目標にペットボトルの100%リサイクルを目指しています。
今、私たちにできることは、ごみをできる限り減らすことや、リサイクルへ回すために汚れを落とし、きちんと分別してリサイクルごみへ捨てることではないでしょうか。
ひとりひとりの小さな行動が、少しずつでも現状を変えていきます。
シェア、コメントをしていただけると、より多くの方にペットボトルのリサイクルの現状と、リサイクルへの意識を高めていただけると思います。
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00401/Marine plastic|Green Alliance
https://www.green-alliance.org.uk/marine_plastics.php
ペットボトルごみがついに限界!? ~世界に広がる“中国ショック”~|クローズアップ現代+
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4126/
ゴミから資源へ。エビアン、2025年までに100%リサイクルボトルを導入 | IDEAS FOR GOOD
https://ideasforgood.jp/2018/02/16/evian/
IBMの研究チームが開発した新時代のリサイクル技術!洗浄・分別不要でPET再生を可能にする「VolCat」が話題に | Techable(テッカブル)
https://techable.jp/archives/93777
【スゴ技ニッポン】国内初のバイオペットボトルでCO2削減!三ツ矢サイダー(1.5リットル)に注目(2/3ページ) – 産経ニュース
https://www.sankei.com/premium/news/180203/prm1802030001-n2.html
廃棄物ゼロ社会の実現を目指す新たなグローバルプランを発表: The Coca-Cola Company
https://www.cocacola.co.jp/press-center/news-20180119-21
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